人は見ても信じない

殺人も列車事故もなかなかでなくてすみませんね。
弾薬庫の爆発もあったのかな。

「嘘」とか「人を分かつ原発事故」でも取り上げたのだが、今回原発事故で起こったことがややこしいのは、単なる事実ではなく、事実の周りに人が作るさまざまな心理的な動きがそれを彩っていることだ。

いま、こんな、原発事故が起こって、何もなければ浴びなくてもいいような放射能を多くの人が浴びて、口に入れなくてもいい毒物を口にせざるを得ない状況になっている。

国際的な放射線関係の機関はすべて、年間1ミリシーベルトから100ミリシーベルトというような低線量の被曝について、ガンになる可能性が閾値なく増えると考えている。日本の国もそう考えており、そのような法律もある。

一方で放射線総合医学研究所のホームページだとか、原子力安全委員である久住静代先生などは、基本的には100ミリまで大丈夫だという考えに基づいている。福島のアドバイザーとして招かれた、長崎大学の山下俊一教授も基本的にそういうことを言っている。このブログにもそういうコメントをいただいた。

私は当初、およそ半々でどちらの説もあるのかと思っていた。

ところが、山下教授は実は事故前には低線量の被曝の危険性を指摘している論文があるというのである。そこで疑念がわいてきた。小佐古先生、辞表を出されましたね。久住さんもいつもは危険だと思ってるんじゃないのか？

私は専門家ではない。だが、国際社会も国もそんな考えを認めていない。
そのために法律もある。20ミリシーベルト浴びてガンになった人に対して、裁判所は労災を認めている。閾値を支持する人、たとえば池田信夫氏は国際社会がそういう閾値のある考え方を認めていないということを知っている。

なのに、なぜ、「事故が起きて毒物が撒き散らされたのですが、毒物が撒き散らされたほうが皆さんは健康になります。国の法律は間違いです。こちらが正しいのです。少量の毒物は食べてください。」というようなことを今の時点で多くの人が言わなければならないのだろう？もし彼らの意見が正しいのであれば、おそらく今飯館村で一年間過ごせば数十ミリシーベルトの被曝をするであろうから、一般の人に比べて放射能汚染された飯館村の人のほうが健康になると主張していることになる。

まあ、山下教授は利益供与を受けているかもしれない。
久住委員もお立場がいろいろおありなのだろう。

しかし、全く関係ない人物、おそらく利害のない人間でも、そういう主張をしているのである。
そのことが原発の問題をとても難しいものにしている。
数値の上で、科学や理屈の上で危険だと理解しても、それに対して対策をすることにまで、周囲の人から有形無形の圧力があるのである。

放射線の問題だけではない。原発の安全性の問題もそうである。今回通常ならオカルトでしか起こらないようなことが、ごく身近な事でおこった。3号機の爆発なんかもそうですね。私の友人で映像をリアルタイムでテレビで見ていた人がいて、やはりとんでもない事がおこったと感じた、というのである。悪いが、それは普通だ。私も鈍いほうだよ。今日ロシアの弾薬庫が爆発しましたね。きのこ雲上がりましたか？

キリストは頭よかったと思う。失礼ですけど。死人のうちからよみがえって警告したら、信じるでしょうといったら「彼らにはモーゼと預言者がある。それで信じないなら死人がよみがえっても信じないだろう」と仰った。
また疑い屋のトマスに仰った。「お前は見たから信じたのか。見ないで信じるものは幸いである。」

事実だけでは、また見ただけでは、人間は変わらない。
自分の大事な人を守りたいなら、自分を信じなければならない。

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